なぜ地図記号「寺院」は「卍(まんじ)」なの?

地図を見やすくするため、地図上の建物の機能を記号化した「地図記号」。明治13年(1880年)国土地理院は地図上のお寺や寺院を表すものを初めて「卍」と表記し、現在も使われ続けています。なぜ寺院仏閣を表す記号が「卍」なのか、その理由をご存知ですか?

卍(まんじ)模様の歴史

卍の歴史は古く、新石器時代(約1万年前)のインドでは既に卍模様は生まれており、佛教やヒンドゥー教で頻繁に使用されてきました。佛教の影響が強い国以外でも卍模様が彫られた遺跡が発見されており、世界各地の人々に親しまれた模様だと言えます。

「卍」はサンスクリット語でस्वस्तिक (スヴァスティカ)と呼ばれ、吉祥の印として仏教でも「幸せ」「めでたい」という意味があります。実は、寺院仏閣をよく見ると至る所に卍模様が彫刻されているのです。

この寺院仏閣によく見ることのできる「卍」を寺院の地図記号として採用したのです。

浅草千光寺

 

地図記号は分かりにくい?卍変更案も・・

国土地理院は2020年東京五輪の開催が決定し訪日外国人がこれからさらに増加することを踏まえて、2016年3月、外国人向け地図の地図記号をわかりやすいものに変更しようと提案しました。(今までは外国人向け地図と、国内用地図の地図記号が一緒だったのですね。)

お寺の地図記号の「卍」は外国人観光客から寺院と理解されることは少なく「ナチスのマークに近いのでは?」という意見も聞かれました。国土地理院は一度、寺院の地図記号を三重の塔のイメージの記号へと変更を提案しました。

これに対して、「寺院の地図記号として卍記号を尊重すべき」「卍記号の由来等を説明し、外国人に理解してもらうべき」という指摘が多数あり、地図記号の変更は見送られ、寺院の地図記号は現状のまま「卍」となりました。

卍模様は、ヒンドゥー教ではヴィシュヌという神様の胸の旋毛から、仏教では釈迦の胸に現れた吉兆の印(瑞相)が形の由来と言われており、また、ヨーロッパでは十字架の元とも言われています。

全国各地にある寺院建築物、そして、仏像にも刻まれていることのあるこの卍模様を探しながら参拝するのも楽しいかもしれませんね。