遺族の精神的負担を和らげるグリーフケアとは
グリーフケアとは
グリーフケアとは、親しい人と死別した人が抱える深い悲しみや喪失感を理解し、寄り添い、サポートすることをいいます。(不幸・喪失・死別などによる)深い苦悩・深い悲しみ・悲痛・悲嘆を意味するグリーフ(Grief)と、心配する・配慮する・気配りを意味するケア(Care)を組み合わせてできた言葉です。
大切な人を亡くした遺族の心の中はどうなっているのか
哲学者のアルフォンス・デーケンは、悲嘆のプロセスを12段階に分けて考察しています。
① 大きな衝撃を受け精神的打撃と麻痺状態になります。
② 死んだはずがないと否認します。
③ 死に直面しての恐怖のためパニックを引き起こします。
④ 不当な仕打ちを受けたという不当感と怒りを呼び起こします。
⑤ 世話をしてくれた人々や時には故人に敵意を示したり恨んだりします。
⑥ 罪意識で自分を責めます。
⑦ 空想の中で死者がまだ生きているかのように思いこみ、振る舞います。
⑧ 深い孤独感と抑うつを体験します。
⑨ 精神的混乱が生じ、あらゆることに無関心になります。
⑩ つらい現実に直面することにより諦め、死を受容してゆきます。
⑪ 悲嘆の闇を貫いて光が見え始める頃に、ユーモアと笑いの再発見をします。
⑫ 悲嘆の最終段階で、人は新しいアイデンティティーを獲得し、より成熟した新しい人間として生まれ変わります。
時に順番が逆になったり、循環したりすることもありますが、これらの12段階が悲嘆の正常な反応です。
悲嘆のプロセス全体の期間は、配偶者との別れの場合1年~2年、子供との別れの場合は2年~5年と言われています。しかし、この経過が何らかの理由で抑制されてしまったり(自分で抑え込んでしまったり)すると、その負荷が精神的・身体的に疾患として現れたり、長期化したりすることがあります。大切な人を亡くした喪失感や悲しみから回復するまでにかかる時間はひとりひとり違うのです。
グリーフケアの基本は感情を否定せず、受けいれ、分かち合うこと
昔は人が亡くなると、葬儀や忌日法要(亡くなって7日ごとにお経をあげる)など、縁者・関係者が集まる機会が多くありました。故人を弔うために集まるのですが、遺族にとっては故人を知る人達と会話をすることで、知らず知らずのうちに心の整理の過程を踏んできたのかもしれません。現在では、葬儀や法要の規模は小さく、法要の回数は減少傾向にあります。遺族は自分でも気づかないまま精神的負荷を背負って過ごしていることも少なくないのです。
そんな中で、静かにそっと寄り添ってくれる存在は心強いものです。グリーフケアの基本は感情を否定せず、受けいれ、分かち合うことです。
大切な人を失った方は、素直に人の優しさや助けに甘えてみましょう。そこから感謝の心が生まれ、その感謝の心からこれからもご縁が繋がっていくはずです。